大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和23(れ)1779 判決

主 文

本件上告を棄却する。

理 由

弁護人馬淵分也の上告趣意第一点について。

略式命令請求の手続及び略式命令が憲法第三七条第一項並びに同第八二条に、違

反するものでないことは、当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(つ)

第二号同年七月二九日大法廷決定)。そして略式命令の請求は簡易裁判所の管轄に

属する事件について、公判前略式命令をもつて罰金又は科料の刑を科することを裁

判所に求める公訴提起に附帯する請求であるから、略式命令の請求が憲法に適合す

るものである以上、適法な略式命令の請求があればその公訴の提起も適法であるこ

と論を俟たない。故に略式命令の請求が違憲であつて従つて本件公訴の提起が不適

法であるとの所論は採用することはできない。論旨は理由がない。

同上告趣意第二点について。

憲法第三七条第二項は、裁判所は被告人又は弁護人から申請した証人は、不必要

と思われるもの迄悉く訊問しなければならないという趣旨のものでないことは、当

裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第二三〇号同年七月二九日大

法廷判決)。原判決は右と同一見解に基くものであるから原判決には所論のような

違法はない。論旨は理由がない。

同上告趣意第三点について。

論旨は、酒税法は国民の生活必需品である酒の造石高を極度に制限し、又戦前に

比し二二五〇倍を超える高率の税を課していて、国民の最低限度の生活を営む権利

を侵害するものであるから、憲法第二五条第一項に違反する無効の法律であると主

張するのであるが酒税法は、酒類の造石高を制限している法律ではないのであるか

ら、この点に関する論旨は見当違いである。又憲法第二五条の意義については、既

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に後記当裁判所大法廷判決の宣明するところであつて、要するに同条第一項は、す

べての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営み得るよう国政を運営すべきこと

を国家の責務として宣言したものであつて、即ち国家は国民一般に対して概括的に

かゝる責務を負担し、これを国政上の任務としたのであるけれども、個々の国民に

対して具体的現実的にかゝる義務を負担する趣旨ではないのである。(昭和二三年

(れ)第二〇五号同年九月二九日大法廷判決)。されば、論旨が右憲法の規定から

直接に個々の国民は国家によつて、現実的な生活権を保障されているものとし、そ

の前提の下に酒税法所定の税率は著しく高率であるから、免許を受けずして酒類を

製造することは国民の生活権の行使であり、これを処罰する酒税法の規定は憲法第

二五条に違反すると論ずるのは誤であることは、前示判例の趣旨に照し、極めて明

白であつて所論は採用することを得ない。

仍つて、刑訴施行法第二条、旧刑訴法第四四六条に従つて主文のとおり判決する。

前記大法廷判決に対する裁判官栗山茂の少数意見は同判決所掲の通りである。

右は裁判官栗山茂の少数意見を除き裁判官全員一致の意見である。

検察官 茂見義勝関与

昭和二四年五月一四日

最高裁判所第二小法廷

裁判長裁判官 霜 山 精 一

裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

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